四百年の恋
 (年齢は私よりもずっと上。そればかりか確か殿よりも年上で、名門公家の生まれということもあり、殿が頭が上がらないと聞いている)


 「このたびは、色々と大変でしたね」


 言葉は優しそうだけど、表情は冷たい。


 「ご心配いただきありがとうございます」


 姫が礼を述べたところ、


 「賢婦は二夫にまみえず……と昔より言われますが、変わった生き方をすると何かと大変でしょうね」


 突然冷たい口調で言い放つ。


 正室が姫を軽蔑しているのは明々白々だった。


 「では」


 正室は蔑んだような目線を姫に投げかけて立ち去った。


 その侍女たちもまた、姫に非難のまなざしを向ける。


 「浅ましい女」


 「冬悟さまが亡くなられた途端、さっさと殿に乗り換えて」


 「いえ、もしかしたら冬悟さまが生きていらっしゃるうちから、殿に色目を使っていたのかも」


 何も知らない者どもが、面白おかしく姫を非難する。


 「……そして冬悟さまが亡くなられても、平然と」


 「いけしゃあしゃあと」


 「信じられないわ」


 そして、私にとどめを刺すような言葉が発せられた。


 「よく生きていられるわね。私だったら愛した人の後を追うわ。本当に愛していたのなら」
< 247 / 618 >

この作品をシェア

pagetop