四百年の恋
 「もう待てない。法要を終えて函館に戻ったら、籍だけでも」


 「どうしてそんなに急ぐの?」


 「……」


 「福山冬悟も、圭介くんに私を委ねたでしょう。なのにどうしてそんなに焦っているの?」


 「だってお前は。もしまたあいつが現れたら……」


 「あの人も言ってたよね? この世で私はずっと、圭介くんと共に過ごすべきだと」


 真姫は左手の薬指にキラリとリングを光らせながら、圭介の頬に触れ。


 そのままそっとキスをしてきた。


 「もう寝ましょう。明日に響くから」


 真姫の「この世で私はあなたのもの」という言葉に安心して、ようやく圭介も眠ることができた。


 だが彼は、気づいていなかった。


 一見、永久の愛を誓ったかのように聞こえたその言葉が。


 あくまでも「この世」すなわち現世限定であることに。


 それは決して、いつまでも続く日々だとは限らないということに。
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