四百年の恋
***


 夏至直前の夜明けは早い。


 午前三時前から空は明るくなり始める。


 夜明け前、突如として圭介の耳に波音が響いてきた。


 「……?」


 それはうるさいほどに鼓膜を刺激したため、圭介は目を覚ました。


 (昨日は全然、気にならなかったのに……)


 重い瞼を開けた。


 昨夜は真姫に夢中で、波音は全く聞こえなかった。


 「真姫……?」


 その時異変に気がついた。


 隣で寝ていたはずの、真姫がいない。


 「真姫!」


 圭介はベッドから飛び起きた。


 するとすぐ脇にあるテーブルの上に、キラリと光る指輪が。


 (これは俺が真姫にプレゼントした、婚約指輪)


 なぜここに?


 しかもそのそばには、置き手紙が。


 「今までありがとう」


 (……!)


 これはどういうことか、混乱した頭の中で圭介は思案した。


 「まさか、真姫……!」


 不吉な予感がして、窓の外を眺めると。


 窓の外に広がる浜辺。


 その辺りに小さな人影が見えた。


 「何てことだ……」


 圭介は大急ぎで着替えて、ホテルの部屋を飛び出した。
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