四百年の恋
***


 それは、新年早々の出来事だった。


 「えっ、合併が早まった?」


 学校はまだ冬休み中だが、冬期講習開催のため登校した圭介は、同僚教師の話に仰天した。


 「何だって? 今年の新学期……つまり四月から!?」


 圭介の勤務する、「紅陽(こうよう)女学園」。


 伝統ある中高一貫教育の女子高だったが、系列が同じ男子校の「聖ハリストス学園」と合併、共学化することになったのだ。


 共にキリスト教の中でも、正教系の教会団体が経営する学校。


 少子化の影響で、数年後には合併する計画ではあったのだけど。


 それが急に早まったのだ。


 「そんな、いきなり……。教室が足りないじゃないですか」


 これまで一学年三クラスだった紅陽女学園に、聖ハリストス学園の男子三クラス分が増加する。


 単純計算で、生徒は倍になるのだ。


 「とりあえず、中等部の新校舎はもう、完成しているから……」


 同僚の説明によると。


 中等部の生徒はまず、新校舎に移動。


 ここ旧校舎は、高等部の校舎として用いられることになるのだ。


 「施設面はいいとして、生徒だけじゃなく教師も二倍になるじゃないですか。どうなるんですか。クラス担任や、授業の割り振りは……」
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