四百年の恋
 「えっ、自分が担任ですか?」


 圭介は驚いた。


 「三年一組」の担任教師として、推挙されたのだった。


 新・紅陽学園もまた、女子高時代のやり方を受け継いで、進路別のクラス編成を行なっていた。


 しかも「一組」は、難関大学志望者が集められるエリートクラス。


 通常ならば経験豊富な、定年間近のベテラン教師が、「一組」の担任となるのが常だった。


 紅陽女学園、聖ハリストス学園それぞれの教師たちが一同に集結した際に見渡したけど。


 三十代の圭介は、かなり若者の部類だった。


 「自分はまだまだ若輩者ですし……。一組の担任にはもっと相応しい方がおられるのではないでしょうか」


 当然圭介は遠慮したのだけど、


 「いやいや吉野先生、これから当学園は新時代を迎えます! 新しい時代には、若い力が必要なのですよ!」


 新たに三年の学年主任となったベテラン教師に、圭介は肩を叩かれた。


 (何かおかしいな)


 圭介は疑った。


 普段は「若造の分際で」と一蹴し、若者の意見になどほとんど耳を傾けないベテラン勢がやたら若者を持ち上げ、仕事を与えてくる時には。


 十中八九、裏がある。


 (きっと新・一組にはベテラン勢が手に負えない不良とか、勉強はできるけど素行不良とか、何らかの問題児がいるんだ。そんなのの面倒を見たくないから、俺に押し付けてきたんだろう)


 そう確信した。
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