四百年の恋
 新年度から二校は、正式に合併となる。


 春休み中にクラス分けが発表となり、新年度からの予行演習として登校日が何日か設けられていた。


 特に三年生は、自分たちは合併および共学化とは無関係のまま卒業すると思い込んでいたので、突然の展開に当初は戸惑いも見られた。


 だが何度かオリエンテーションを続けていくうちに、慣れてきたようだ。


 最近は男子校・女子高でも、さほど異性への抵抗感はない。


 完全に隔離された以前とは異なり、今はメールや携帯電話が発達しているため、他校との交流が水面下では活発らしい。


 懸念された保護者からのクレームも、さほどではなかった。


 共学化は以前から予告されていたし、授業に支障さえ出なければ問題なしと考える保護者が大多数だったようだ。


 春休み中の数度のオリエンテーション。


 この機会が、圭介と問題児「清水優雅」との初対面になるはずだった。


 しかし清水は、オリエンテーションに一度も姿を現さなかった。


 「母親から学校に電話がありました。春休み中は箱根に墓参りに出かけるそうです」


 元・聖ハリストスの教員で、新年度から同僚となる教師が報告してくれた。


 「墓参り?」


 他にも海外旅行などで不在の生徒も何人かいた。


 結局圭介は新学期まで、件の清水優雅と対面することはなかった。


 春休み中のオリエンテーションでは大して混乱もなく、あとは新学期を待つだけとなった。
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