四百年の恋
***


 「今日からこの三年一組の担任となる、吉野だ。みんなにはすでにオリエンテーションで接しているけど、今日から正式にこのクラスの担任だ」


 新学期。


 数十人の生徒の前で、圭介は改めて挨拶をした。


 一組、すなわち難関大学を目指す生徒が多く集められたクラス。


 真面目そうな連中が多い。


 大村美月姫は、廊下側から二列目の最前列に座っている。


 新学期の座席は、男女混合の出席番号順。


 その美月姫の隣の席が空いている。


 「今日も清水は欠席か」


 結局オリエンテーションに一度も顔を出さなかった清水は、新学期だというのに今日も姿が見えない。


 「誰か、清水から連絡あった人はいないのかな」


 圭介は他の生徒に問いかけた。


 聖ハリストス出身の男子生徒たちが、顔を見合わせたりひそひそ小声で話をしたりしている。


 「あいつは、昔からマイペースだから……」


 そのうちの一人が、清水をかばうような発言をした。
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