四百年の恋
 「困った奴だな。マイペースも結構だが、学校は団体生活の場なんだから……」


 圭介が独り言のようにぶつぶつつぶやいていた時のことだった。


 「うわー参った! この校舎ややこしいんだから。迷っちゃったよ」


 いきなり廊下から大声がして、そのまま教室のドアがガラッ! と開いた。


 クラスの全員が、音のするほうを振り向いた。


 「!」


 「あちゃー、もう始まってたか。ん? 俺の席はここかな?」


 その男子生徒はズカズカと、教室に入り込んできた。


 唯一の空席が自分の席だとみなし、そこに腰かける。


 「おはようございます、センセ」


 にこっと笑いながら。


 「あ……」


 その男子生徒・清水優雅の顔を見た瞬間。


 圭介は絶句した。


 この18年間、忘れたくても忘れられなかった男と、彼は同じ顔つきをしていた。


 「福山……!」


 そう、彼は福山冬悟(ふくやま ふゆさと)。


 まさにその人だった。
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