四百年の恋
 「まず来週から、授業が本格的に始まり……。今月末から連休前にかけて、進路に関する個人面談を……」


 自作のメモを朗読しながらも、圭介は横目で美月姫と清水優雅を観察していた。


 奇遇にも、両隣同士になった二人。


 共学化初日。


 クラス内に、隣の席に男子が存在することにまだ違和感を覚えているらしく。


 加えてそれが、超個性的な人物ともあって。


 美月姫は言葉をなくしていたようだ。


 何が楽しいのか分からないが、優雅は楽しそうな表情で圭介が話すのを眺め続けている。


 (真姫と福山、いや月光姫と冬悟と言ったほうがいいのか……)


 圭介はメモを口先だけで読みながら、別のことを考えていた。


 (前世からの運命に導かれて、またこの地で巡り会ったとしても……あの二人の間に再び恋が芽生えるのだろうか?)


 外見だけから判断すると、面影を大きく残した二人がそれぞれ、月光姫と冬悟の生まれ変わりであると確信できる。


 だが……あまりに互いのキャラが違いすぎる。


 しっかりしていそうで、どこか儚い面を持っていて、守りたくなる雰囲気を持っていた真姫。


 だがいまここにいる美月姫は、他人の介入を許さないような隙のなさを醸し出している。


 まだ17歳だというのに。


 そして優雅は。


 悩みなど全くなさそうな、いいところのお坊ちゃん風。


 笑顔が絶えない。
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