四百年の恋
 あれから18年。


 圭介は毎日の生活を虚しく繰り返しながらも、真姫の面影を消せずに生きてきた。


 いつか再会の日が訪れることを、彼は胸の中で確信していた。


 それを密かに祈りつつ、時は流れた。


 二年前、当時の紅陽女学園の新学期スタートの際。


 中等部から進級してきたばかりの女生徒、大村美月姫をはじめて間近で見た。


 中等部時代から学業優秀ゆえその名を轟かせていたため、美月姫の存在を圭介はすでに耳にしていたが。


 最初は特に目立った印象はなかった。


 ところが世界史の授業を受け持つようになって。


 質問に答えた時に声を聞いたら、どことなく懐かしさを覚えた。


 その直後、窓際の席に座っていた美月姫は目が疲れたのか、眼鏡を外して窓の外の空を見上げていた。


 はじめて眼鏡を取った美月姫の顔を見た。


 「ま……!」


 真姫、と思わず呼びかけそうになって、圭介は慌てて口をふさいだ。


 そのまま手にしていたホワイトボード用のペンを落とし、教卓に手をかけたまま震え出した。


 「先生、どうかしたんですか? 顔色が真っ青ですよ」


 近くの席の女生徒に指摘された。


 圭介は震えが止まらず、


 「わ、悪い。今日は体調がすぐれないので、ここで授業を打ち切る。あとは自習だ」


 「先生?」


 それだけ言い残して、授業は強制終了。


 圭介はふらつく足取りで、ざわつく教室を後にした。
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