四百年の恋

春風

***


 今年の春は桜の開花が早い。


 例年この辺りは、連休直前に桜が咲き始める。


 しかしこの年は、四月のまだ二十日くらいに開花をはじめた。


 暖気により数日後にはもう満開間近。


 ちょうど第一回個人面談の時期だった。


 進路相談などが目的の、担任教師と生徒との初めての一対一の面談。


 男女混合の五十音順の出席番号。


 出席番号順に面談の順番が回ってくる。


 この日の放課後、ちょうど大村美月姫の順番となった。


 圭介は前の晩から楽しみというか待ち遠しくて、実はなかなか眠れなかったのだ。


 昔、真姫と会える前の日に感じたときめきに、少し似ている気がしていた。


 「相変わらず、文句なしの成績だな……」


 新学期早々に三年生を対象に行なわれた学力テスト。


 そのテストの成績表を眺めながら圭介はつぶやいた。


 「どこがですか?」


 暖かな春の風を切り裂くような鋭い口調で、美月姫が答えた。


 「こんなひどい成績……! 自分が情けなくてたまらないです。これから大事な時期だというのに……」


 美月姫は悔しそうにうつむく。
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