四百年の恋
 「大村は、出身は札幌なんだな」


 美月姫の出生時からの経歴データが、担任である圭介の手元にある。


 それを参照すると、美月姫は小学生の時に、親の仕事の都合で函館に引っ越してきていた。


 「はい。父親の勤めていた百貨店の札幌店が、閉店になったのに伴いまして」


 不況の影響で、某大手百貨店の札幌店が閉鎖となり。


 残された従業員の多くは、函館の本店に移ることになったらしい。


 美月姫の父親もそうだった。


 「せっかく一戸建ての家もあったのに、手放すことになりました」


 「そうだったのか……」


 小学校は公立だったものの、当時から学業が優秀だったため、中学校は名門私立・紅陽女学園を受験。


 そのままエスカレーター式で、今日に至る。


 「……で、どうだ? 合併と共学化の感想は」


 「正直、困惑しています」


 美月姫は遠慮のない口調で答えた。


 「困惑か」


 圭介は苦笑するしかなかった。
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