四百年の恋
 「姫は福山冬雅との将来は考えられないくらいに、冬悟を想っていたんだろう」


 姫のその決断は、かつて自分を置き去りにした真姫の面影と重なる。


 「どんなに未練があっても、死んだ人は生き返ってなど来ません。それならばこれからの幸せを考えるべきだと思いました」


 きっぱりと言い放つ美月姫。


 確かにそれは、正しい意見だが、


 「だけど人間は、誰もがそこまで強いとは限らないし、すべてをきっぱり割り切れるとは限らないから・・・」


 それがまさに圭介自身だった。


 「……私、先生の大学生時代の、彼女の話も聞きました」


 胸を針で突かれるような痛みを、圭介は感じた。


 「ああ……。噂はいずれ広まるからな」


 圭介は必死に強がった。


 「私、にわかには前世とかそういうのって、信じられないのですが。たとえそれが事実だったとしても、」


 圭介は美月姫の言葉を、固唾を飲んで見守った。
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