四百年の恋
 「先生の恋人だった人も、身勝手だと思いました。どうして現在の幸せを放棄して、遠い昔の記憶にすがったのでしょうか」


 「……」


 「その結果自殺という道を選んで、恋人だった先生のみならず、家族や友人、たくさんの人を悲しませたじゃないですか。どうしてそんなひどいことができるのか、私には全く理解できません」


 「俺も……理解できないし、したくもなかった」


 ようやく圭介は、思いを口にし始めた。


 「彼女が前世という見えない絆を優先して、俺を見捨てたという現実を、受け入れたくもなかった」


 「先生」


 「だけど、全てを捨てても構わないと思うほどに、月光姫と福山冬悟の愛の絆は強かった。それは否定できない事実だ」


 「愛とは……何なのでしょう」


 「ん?」


 「みんなに迷惑をかけてまで貫くほど、愛って大切なものなのでしょうか」


 美月姫は真剣なまなざしで、圭介を見据えながら問いかけた。


 「今の俺には、何も答えられない」


 「なぜですか」


 「俺は18年前……、一生分の愛をその女性に注ぎ尽くした。報われない結果に終わったとはいえ、後悔していない」
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