四百年の恋
 「聖ハリストス出身の先生たちや生徒たちは皆、そのことを知っているのですか?」


 「清水本人は隠していますが、こういう噂って、生徒たちの間にもどうしても広まりますしね」


 「なるほど」


 「これも噂なのですが……。丸山幹事長には娘しかいないのです。しかも文筆業に携わっていて、父親のあとを継ぐ気はゼロらしく。そこで幹事長は、愛人の子とはいえ優秀な清水を後継者に、と考えているとか」


 「えっ、後継者!?」


 あの清水が、丸山幹事長の地盤を継ぐ?


 「ていうか、幹事長に愛人と隠し子ですか。これって大スキャンダルではないのでしょうか。どうして騒ぎにならず、今日に至ったのですか? 昔は愛人問題で辞任した総理大臣がいたというのに……」


 「……真相を暴けるマスコミが、今この国に存在すると思いますか?」


 「!」


 「丸山幹事長の地盤である、この地で」


 そうなのだ。


 丸山幹事長の権力は、総理大臣を凌ぐとも言われている。


 特にここ地元では、逆らったら生きていけないと噂されるほど。


 刃向かう者は謎の死を遂げるという「伝説」すら存在している。
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