四百年の恋
 「だから学校内で、問題行動を繰り返しているのか?」


 「問題行動、って。そりゃないよセンセー。俺別に、校則に違反してないし」


 「校則に違反してなきゃ何してもいいって訳じゃないぞ。あまり度の過ぎたいたずらをしていると、いつか冗談じゃ済まなくなるんだぞ」


 「んー……」


 「この前も、古典の先生の授業の時、“怨霊ごっこ”とかいってお化けのかぶりものをして先生を驚かせただろう」


 「そうだったっけ?」


 「子供のいたずらならまだしも、もしも相手が心臓が弱くて、ショック死したらどうするんだ。大人になったら責任とかそういうものも出てくるんだぞ」


 「明日から気をつけまーす」


 「こらっ、話はまだ……」


 「これから四時間目の授業でーす」


 清水は笑顔で、社会化準備室を飛び出していった。


 「まったく……!」


 困った奴だけど、どこか憎めない奴。


 圭介の清水に対する印象は、そんな感じ。


 あの無邪気さが今後、周囲の圧力に屈して失われないよう、圭介は願わずにはいられなかった。


 先ほど清水が立っていた窓辺から外の景色を眺める。


 ゴールデンウィーク直前、桜は散りつつあった。


 気温も高まり、辺りはすでに春が満ち溢れていた。
< 352 / 618 >

この作品をシェア

pagetop