四百年の恋
***


 「吉野先生、かっこいい」


 今日もランチタイムの話題のメインテーマは、恋バナとかいう類のもの。


 恋や愛に興味のない美月姫だったけど、他人の話を面白おかしく聞いている分には楽しかった。


 「あんた、まだそんなこと言ってんだ」


 親子ほど年齢が離れていると言ってもいい担任教師に対して、思いを寄せる女生徒は複数存在していた。


 「先生がOKすると思うの? ドラマや小説とは違うんだから。禁断愛といえば聞こえがいいけど、ばれたらあんたは退学、先生は失職だよ」


 友人たちが言い合ってる。


 美月姫は聞き役というか、傍観者。


 「卒業するまで、我慢するもん」


 「卒業後だって、教え子に手を出したっていう事実は、一生付きまとうんだよ。そういう関係になったのが本当に卒業後だったとしても、実は在学中からだったんじゃないか……って噂になるし。だから先生は一生、私たちとは一線を引いた関係だと思うよ」


 「そんなこと分からないよ。……ねえ美月姫はどう思う?」


 「えっ」


 吉野ファンの友人から急に話を振られて、美月姫は驚いた。
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