四百年の恋
 「まさかまさか、吉野くんはそんな人じゃないよ。あれ? 福山くんは、ビールは苦手だった?」


 冗談のつもりで圭介の名前を出したところ、福山が思った以上にシビアな表情を見せたため真姫は急いで話題を変えた。


 その時真姫は、福山のジョッキがあまり減っていないのに気がついた。


 「いや……。異国風の味のする酒だから、慣れてなくて」


 (これ、普通のビールだよね?)


 特殊なビールを間違って注文したかと思って、真姫はビールの色を確かめたけど、普通だった。


 「もしかして福山くん、日本酒のほうがよかったかな?」


 「え、でもまだビール残ってるし」


 「いいよ、それ私飲んであげるから!」


 真姫は福山のジョッキを奪い取り、新たに日本酒を注文した。


 コップは二つお願いして。


 その後日本酒に転向。


 しばらくは日本酒をじっくり味わい。


 ワインを飲んだことがないとつぶやいた、福山の言葉に驚いて、ついにはワインまで注文。


 赤・白・ロゼ……次々と。


 飲むことに夢中で、この夜の会話内容を真姫は、ほとんど覚えていなかった……。
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