四百年の恋
 血を流して息絶えたウサギたち。


 「いったい誰が……」


 美月姫が口にする。


 「警察に連絡しましたか?」


 圭介は警備員に尋ねた。


 「は、はい……。先ほど携帯電話で」


 すでに通報済みだった。


 圭介がウサギ小屋の内部を観察すると、動物の毛が落ちていた。


 何者かが犬か猫を小屋の中に入れて、襲わせたのだろう。


 いずれにしても許しがたい行為だ。


 「あとは先生たちでやっておくから。お前たちは教室に行きなさい」


 無残な現場を生徒に見せたくはなかった。


 「……清水?」


 圭介の指示が聞こえないのか、清水は微動だにしなかった。


 「清水、聞こえないのか。教室に戻るんだ」


 「……不公平だよね」


 「え?」


 肩を叩こうとしたほんの少し前に、清水がつぶやいた。


 「……小学校とかに男が乱入して、子供を次々襲って殺したら。たちまち取り押さえられるよね。逃げたって警察が総力を挙げて捕まえて死刑だよね」


 「間違いなくそうなるだろう」


 「なのに、このウサギたちは? 警察がまともに捜査して、犯人捕まえてくれる? 捕まえたところで、大して罪にならないよね。動物虐待程度で」
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