四百年の恋
 「……」


 確かにそうだと、圭介は思った。


 警察が来たところで……形式上は、犯人の指紋や足跡を採取したりするだろうけど。


 どれだけ真剣に捜査をしてくれるだろうか?


 殺人事件みたいに、捜査本部を設置してまでの捜査は望めないだろう。


 近隣の住民が不審者の情報を提供してくれるのを待つか、たまたま犯人が同様の犯罪を犯した時に現行犯で逮捕されるのに期待するくらいしか……。


 「姫、無事だったか」


 「!?」


 清水のその一言に、圭介は仰天した。


 (姫・……?)


 福山冬悟と同じ声で、同じ台詞を口にしたから。


 「ごめんね。怖かったよね」


 そう言って清水は、奥に潜んでいたウサギを抱き上げた。


 真っ白で小さなウサギ。


 清水はそれに「姫」と名づけて、ひときわ可愛がっていたらしい。


 姫は体が小さかったため、たまたま小屋の奥の木の隙間に体がすっぽり収まり、難を逃れたようだ。


 「姫」は清水の胸の中で、ガタガタ震えていた。
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