四百年の恋
 「ごめんね。俺が付いていてやれなくて。守ってあげられなくて……」


 福山の面影が今、目の前に甦ったような気がして、圭介はただ戸惑っていた。


 (姫を傷つける者は、私が許さぬ)


 福山の声が、圭介の頭の中で鳴り響く。


 恐ろしい目線ととものこの言葉が発せられたのは、あの時。


 嫉妬に狂い、真姫を我がものにしようと無理矢理襲い、福山に咎められた時……?。


 そして圭介は、


 「清水?」


 回想を終え我に返ると、清水の瞳から涙が流れ出していたのを目にした。


 人目も憚らず、清水は泣いていた。


 「……」


 一部始終を見守っていた美月姫もまた、清水の涙に動揺していた。


 (いくら可愛がっていたウサギのためだからって……人前でこんなに泣くの?)


 どちらかといえば、何事に対しても真剣に打ち込んでいなさそうに見えた清水。


 そんな彼が、ウサギのために……。


 「!」


 急に清水は空を見上げ、鋭い視線を向けた。


 涙を止めようとしているのだろうか。


 「お前の仲間たちの敵討ちは、俺がやるから」


 「敵討ち?」


 圭介の問いには答えず。


 清水は姫を左手で抱いたまま、右手で携帯電話を取り出した。
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