四百年の恋
 「そうだったんだ……」


 清水は黙って聞いていたが、圭介が話し終えたのを確認するとようやく口を開いた。


 「ま、昔の話だ」


 そう締めくくった。


 なぜ清水に、自分の封印された過去を告げたのか。


 弱みを見せるようなことをしたのか。


 圭介自身にも分からなかった。


 「いつも俺の話ばっかり聞いてもらっていたからね。たまにはセンセーの話も聞けて、勉強になったよ」


 「受験には不要だけどな」


 「……だけどセンセー、間違っていると思う」


 「間違ってる? 俺が?」


 突然の予想外の反応に、圭介は驚いた。


 「センセー。愛されてなかった、って言ったよね」


 「そうだ」


 (俺は真姫に愛されてなどいなかった)


 自分の一方通行、独りよがりな思いだった。


 それは真姫にとっては負担でしかなく、結果的に苦しめて死に追いやったのだと、圭介は18年間罪の意識を背負っていた。


 真姫は福山を失った寂しさ・つらさを忘れたくて、自分に身を任せたのだ。


 だけど結局、最後は福山への想いを貫いて。


 そして自分は、この世に取り残された。


 捨てられた……。


 そう信じ込んで心を閉ざしていた。
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