四百年の恋
 真姫を強引に抱こうとした時。


 突然現れた福山に睨まれた次の瞬間、まるで呪いでもかけられたかのように・・・階段から転落。


 左膝前十字靭帯損傷という大ケガを負い、インカレ出場も夢と消え、実業団入りも白紙撤回されてしまった。


 幼い頃から慣れ親しんでいたバドミントン。


 当時の医療技術では、以前通りのプレーができる体に戻ることはかなわなかった。


 選手としてプレーするのはあきらめ、指導者として新たな道を歩んではいるのだけど。


 今でも時々考える。


 「もしあのケガがなかったなら、俺はどれくらいの選手になっていただろう」


 そんなことを。


 あのまま順調にいけば、大学卒業と同時に実業団チームに拾われて、そのまま日本リーグに参戦。


 そこでの活躍が認められれば、日本代表入りも見えてくる。


 そしてオリンピック出場。


 実業団入りは、オリンピック出場への事実上の最低条件だった。


 (だけど、そんな上手い話はないだろう)


 実業団入りしたとして、そうとんとん拍子に話が進むとは限らない。


 日本代表クラスの壁は厚く、スランプに陥り伸び悩む可能性大だった。


 そしてケガなどでモチベーションが下がり、選手として大成できないまま、現役引退を余儀なくされたかも。


 その時果たして、今の仕事ほど条件の高い仕事が与えられたか、疑問符である。
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