四百年の恋
 よくよく考えてみると、自分は不運で不幸だと思い込んでいたのだけど、結果的には社会人としてそれなりにいい人生を歩んでいるのでは?


 圭介はそうも考える。


 このケガによって、見えてきたものも多い。


 (昔の俺は、バドミントンがちょっとばっかり上手だからって、学校やジュニアチームでちやほやされていい気になっていた)


 まるで王様だった。


 あんな日々が続いていたら、きっと鼻持ちならない嫌な奴になっていただろう。


 圭介はそう確信している。


 当時の彼を知る者は、一定の成果を収めた優れた指導者になっている現実に驚く。


 「まさかあの吉野が……」


 あんな天狗になっていた男が、今では名の知れた指導者なのだから。


 しかも学内では、進学クラスの担任を任され。


 「昔のあいつと比べたら、まるで別人だ」


 そんな声がよく聞かれる。


 別人……。


 「別人」と評される度に圭介は、心にひっかかるものを感じるのだった。


 (以前も、そう言われていたような気がする……)


 どこかで誰かに。


 しかしながらそれに関して、全く思い出すことができないでいる。
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