四百年の恋
 「あー、元気にしてるんだ」


 水上の妻が、室内で飼育しているウサギの「姫」を連れて来た。


 すっかり元気そうになっていて、一同安心した。


 「姫ー。相変わらず可愛いねー」


 清水は姫に頬ずりしていた。


 ある者は姫を構い、またある者はお菓子を食べながらのおしゃべりに熱中していた時。


 「母さん……」


 清水の表情がこわばった。


 豪勢な衣装に香水の匂いを振りまいて、水上家に清水の母親が現れた。


 「こんにちわ……」


 近くにいた生徒たちは挨拶をしたのだけど、清水の母親は無言で頷いただけだった。


 「奥様、わざわざお越しにならなくても。連絡いただければうちの人が伺いましたのに」


 「大丈夫、店に行く途中だから」


 家の前にタクシーを停めて、降りてきたようだ。


 「これ、水上に渡しておいて」


 「かしこまりました」


 水上の妻に、A4サイズの茶封筒を預けるとすぐ。


 清水の母親は、待たせていたタクシーに再び乗り込み、去っていった。
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