四百年の恋

嫉妬

***


 数日後。


 地域史1の講義が始まる五分前に、真姫は教室に入った。


 辺りを見回す。


 福山の姿がないのを確認して、どこか安堵している自分が不思議だった。


 あれから連絡がない。


 電話番号を教えていないので、それも当然だけど。


 真姫も彼の連絡先は知らない。


 この講義で会うのが、唯一の絆。


 「真姫、おはよう!」


 麻美が席を取っていてくれた。


 「この前、福山くんと飲みに行ったんだって?」


 すでに話が広まっている。


 「行ったけど……」


 「何か進展はあったの?」


 「進展、って?」


 「二人は特別な関係に、とか」


 「何言ってるの、まさか!」


 慌てて否定したけれど。


 夢かもしれない。


 酔ったはずみなだけかもしれないあのキスの感触を、真姫はまた思い出してしまった。
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