四百年の恋
 「ごめん……。ちょっとくすぐったくて」


 美月姫は言い訳した。


 本当はそれだけではない。


 先ほどの快感が呼び覚まされた。


 体が一つに繋がっている時よりもむしろ、優しく髪を撫でられ、首筋をなぞられている時の方が燃え上がるものを感じた。


 「ごめんねびっくりさせて。美月姫の髪、綺麗だなと思って」


 実情を知らない友人は、美月姫の髪の毛に羨ましそうに触れる。


 「艶のあるストレートで、枝毛も全然ないし」


 友人はさらに美月姫の髪の毛をいじる。


 「学校でもこうやって、三つ編みにしないで伸ばしていたら可愛いのに」


 「だって邪魔だもん。授業中や食事中」


 「今はともかく、来年大学入ったら絶対、髪の美しさをアピールした方がいいよ。間違いなくもてるから」


 「もてるようになるために、大学行くわけじゃないし」


 「またそんな……。美月姫は素材がいいんだから。眠らせたままじゃもったいないよ。せっかく綺麗なのに」


 (綺麗? 私が?)


 友人の言葉を実感できず、美月姫は鏡に映った自分を見つめた。


 あいかわらずの、ぼやけた視界。


 その時。


 「ほんとさらさらな髪。シャンプーのCMに出てくる女優みたい。そして時代劇に出てくるお姫様みたい」


 美月姫の髪をいじりながらつぶやく友人の一言により、先ほどの記憶が甦った。


 (姫・・・?)
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