四百年の恋
 (これから私は……?)


 さっき、体が離れていくのが寂しかった。


 繋いだ手を離すのが切なかった。


 なのに。


 「ふとそんな気分になった。それだけのことじゃないの? 俺も君も」


 優雅はその一言で片付けた。


 「次」の約束は交わされることはなかった。


 明日は何も見えなかった。


 体の関係を持ったからって、彼の特別な存在になれるわけではない。


 あちらにとっては、こんなの大したことではないのかもしれない。


 優雅が過去にどれだけの経験があったのかも、美月姫には判別できなかった。


 もしかしたら挨拶程度の感覚で、色んな女と関係を持っているのかもしれない。


 そういう相手に対し、本気になったり恋愛感情を抱いたりしても見返りは何もない。


 自分が傷つくだけ。


 (向こうの出方が分かるまで、何事もなかったように、自然体で振る舞うしか……)


 明日から、いつもの自分らしくいられるよう心がけよう。


 そんなことを考えているうちにいつしか睡魔に襲われ、美月姫は眠りに落ちていた。
< 430 / 618 >

この作品をシェア

pagetop