四百年の恋
 変な噂が立つと、この職場に居にくくなる。


 それだけは避けなければ。


 そんな信念と、外見は真姫に似ているものの内面は全く異なる美月姫に対し圭介は急にどうこうしようという感情もなく、しばらく静かな日々を送っていた。


 (大村……)


 だがその日からますます、圭介が美月姫から目が離せなくなったのも事実。


 以前と変わりなく見えて、確実に成熟の度合いを増していく年頃。


 幼さは残っているとはいえ、日に日に愛する真姫に似てくるその雰囲気。


 こんな日が続くと、いつか気持ちを抑えられなくなりそうで怖かった。


 (それだけは、絶対にまずい)


 生徒は教師のそういう点に敏感だ。


 万が一特別な視線で見ていることがばれてしまうと、生理的な拒否反応を示されるだろう。


 破廉恥教師のレッテルを貼られると、もうこの学園には居られなくなる。


 そして肝心の、美月姫本人にも軽蔑され、嫌われる可能性が高い。


 最悪のシナリオを回避するために、圭介は自分の気持ちに蓋をし続けた。
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