四百年の恋
***


 八月も下旬になると、昼間は暑くとも夜になれば急速に気温が下がり、秋の気配を感じる。


 だがこの日は残暑で、昼間は30度を越えた。


 夜になっても気温は25度を下回らず、寝苦しい夜だった。


 暑さで勉強もはかどらないので、美月姫は早寝をすることにした。


 寝る前のシャワー。


 水温を低くして、火照った体を冷やす。


 脱衣所には洗面台もある。


 その鏡に映し出された、背中のライン。


 以前と何も変わらないように見えるものの。


 ……霧の夜、衝動的に清水優雅に許してしまった体。


 処女を失うということが、こんなにあっけないことだとは知らなかった。


 全てが変わってしまったあの霧の夜の後も、何事もなかったかのように平然と過ごせている。


 パジャマを着て、首にバスタオルをかけたままで美月姫は、リビングルームへと歩いた。


 テレビがつけっ放しになっている。


 おそらく父親がスポーツニュースを見ていて、そのまま消さないで寝てしまったのだろう。


 すでにスポーツニュースは終了したようで、その後のバラエティ番組だろうか、何やら騒がしい。
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