四百年の恋
 大して関心もないので画面は見ていないのだけど、美月姫の耳に出演者の発言が飛び込んできた。


 「夏の夜、公園で。出会ったばかりの男となりゆきでHしちゃった」


 「!」


 思わず美月姫は振り返り、画面を見た。


 発言の主は、名前の分からないセクシータレント。


 そのようなセクシー系のタレントが大勢出演していて、司会進行に従ってそれぞれ過去の体験談や暴露話をしているようだ。


 いわく「交際期間中、キスよりセックスの回数のほうが多かった」


 美月姫は思わず、首にかけられたタオルをぎゅっと握り締めた。


 そして別の出演者が、こう断言した。


 「それって、やり逃げじゃん」


 やり逃げ……?


 「何なの、この下品な番組!」


 明日のお米をとぎ終えた母親が、慌てて台所からリビングへと戻ってきた。


 「公共の電波で、こんな下品極まりないこと……!」


 とても娘に見せられる内容ではないと判断し、慌ててチャンネルを変えた。


 そして何事もなかったかのように、アイロンがけの準備を始めた。


 「……お母さん、まだ起きているの?」


 「お父さんのワイシャツをアイロンかけたら、すぐにシャワーして寝る予定。美月姫はもう寝るの?」


 「うん。今日は早寝する」


 「分かった。おやすみ」


 「おやすみなさい」


 美月姫は部屋に戻った。
< 436 / 618 >

この作品をシェア

pagetop