四百年の恋
***
「大学は、あっちの方角。そのちょっと右側が、五稜郭のある辺り」
「光の中に埋もれているね」
二人はロープウェーで、夜の函館山の展望台に来ていた。
秋の夜風が、かなり肌寒い。
「亀田(かめだ)は?」
「亀田町は、光の途絶えたあの辺りよ」
真姫は、街の灯りがなく真っ暗な部分を指差した。
亀田町とは、函館市北端の丘陵地帯。
徐々に標高が上がっていく。
「じゃ、松前はあっちだね」
福山は西の方角を見た。
距離があるので、松前町の灯りまでは見えないが……。
「太平洋を見降ろせる方へ行こう」
二人は南側に移動した。
海は真っ暗で、沖合いにイカ釣り船の強烈な光が輝いている。
「真姫、覚えてる?」
「何を?」
「ここに登って、海を見つめたあの日々を」
「え? 大学に合格して函館に来てから、何度か函館山には登ったけど……。昼間も夜間も」
(だけど、海を見つめていたのはいつのこと?)
第一福山とここに来たことなど……。
すると、
「太閤殿下(たいこうでんか)に貢物を献上するために、京の都へ出向いた私を思い、姫は日々ここで海を眺めていたと聞いているが」
「大学は、あっちの方角。そのちょっと右側が、五稜郭のある辺り」
「光の中に埋もれているね」
二人はロープウェーで、夜の函館山の展望台に来ていた。
秋の夜風が、かなり肌寒い。
「亀田(かめだ)は?」
「亀田町は、光の途絶えたあの辺りよ」
真姫は、街の灯りがなく真っ暗な部分を指差した。
亀田町とは、函館市北端の丘陵地帯。
徐々に標高が上がっていく。
「じゃ、松前はあっちだね」
福山は西の方角を見た。
距離があるので、松前町の灯りまでは見えないが……。
「太平洋を見降ろせる方へ行こう」
二人は南側に移動した。
海は真っ暗で、沖合いにイカ釣り船の強烈な光が輝いている。
「真姫、覚えてる?」
「何を?」
「ここに登って、海を見つめたあの日々を」
「え? 大学に合格して函館に来てから、何度か函館山には登ったけど……。昼間も夜間も」
(だけど、海を見つめていたのはいつのこと?)
第一福山とここに来たことなど……。
すると、
「太閤殿下(たいこうでんか)に貢物を献上するために、京の都へ出向いた私を思い、姫は日々ここで海を眺めていたと聞いているが」