四百年の恋

秋風

***


 九月上旬の放課後。


 バドミントン部の練習に顔を出す前、社会科準備室で休んでいた圭介の元を優雅が訪れた。


 いつの頃からか一人で放課後、圭介の元に遊びに来る。


 暇なのか、お菓子が食べたいのか、話を聞いてほしいのか。


 (母親はほとんど家にいないし、父親はいないも同然だし、兄弟姉妹もいない。家に帰っても寂しいのだろう)


 圭介はそう推測していた。


 友人の前では、寂しさを表に出せないだろうし。


 そんな優雅は社会科準備室真ん中のデスクの上で、ジグソーパズルに励んでいた。


 いつだったか圭介がビンゴ大会で当たったものだったが、面倒なのでそのままになっていた、千ピースのパズルだ。


 西洋の有名な画家の作品をパズル化しているもので、色使いが微妙なため、ピースはどれもこれも同じに見える。


 だが優雅はピースを取り出してじーっと眺め、彼自身の基準でいくつかのグループに分類し、これぞと思うピースを見つけては作成中の部分の上にはめてみる。


 それが面白いように当たっているのだ。


 「さすが」


 圭介は感心してしまう。


 自分だったらどれがどれだか分からず、発狂して投げ出してしまいそうなくらいに難しいパズル。


 それを目の前で優雅が、いともたやすく組み立てている。
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