四百年の恋
 ……楽しいディナーの時間は、あっという間に終了。


 「料理はもちろんだけど、夜景も素晴らしいね。兄さん」


 叔父は店内の窓の外に広がる、函館の夜景に感動した。


 店は街の中心部からは外れた、函館山近郊に位置している。


 標高が高いので、街並みが見渡せる。


 「おや、こっちは?」


 叔父は個室への入り口に気が付いた。


 「あ、そこはVIPの最上級コースの」


 父が説明した。


 美月姫たち一行は「金銀プラン」というコースで、五千円で個室飲み放題付き。


 さらにその上を行くのは「桃源郷(とうげんきょう)プラン」。


 数万円近いコースらしい。


 しかも一日限定一組。


 他のどの個室よりも、見晴らしのよい個室が与えられているという。


 「地元の財界人の大物や、函館を訪れた超有名人くらいしか利用できないんじゃないか」


 この店の最高級プラン。


 ちなみにこの日は使用されているらしく、個室の中からは人の気配がした。


 「いったい、どんな連中が食べてるんだろうね」


 通りすがりに叔父が個室の扉の前で、好奇心に満ちた目で覗くような仕草を見せた。
< 446 / 618 >

この作品をシェア

pagetop