四百年の恋
 その時。


 ガラッ!


 突然扉が開いた。


 「おっと、こりゃ失礼」


 叔父は驚いたものの、偶然を装って歩き去ろうとした。


 美月姫は個室から出てきた人物を確認。


 最初は逆光でよく分からなかったけど、思ったより若そうな男。


 「……清水くん!」


 「あ、大村さん」


 個室から急に現れたのは、優雅だった。


 私服姿だったので、最初は気づかなかった。


 「どうしてここに? あ……」


 優雅に続いて、優雅の母親が部屋の中から姿を現した。


 いつもの如く、華やかな装束。


 「騒がしいわね。どうしたの?」


 少々苛立った表情を見せた。


 「あ、母さん。たまたま同級生に会いまして」


 優雅のその説明で、優雅の母はちらっと美月姫を見た。


 「あ、はじめまして。清水くんとは同じクラスの、大村と申します」


 本当は水上の家で、何度か遭遇してはいたのだけど。


 どうせ覚えてくれてはいないだろうと思い、美月姫は初対面としての挨拶をした。
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