四百年の恋
 「……」


 優雅の母は無言のまま、一礼した。


 冷たい美貌。


 そんな彼女が、しきりに部屋の奥を気にしていた。


 (誰か他にいるのかな?)


 美月姫の疑問はすぐに解決した。


 「こんなところに、どうして人が大勢集まっているんだ?」


 部屋の奥から、年配の男性の声が響いてきた。


 どこかで聞いたことのあるような。


 すると年齢の割には背の高い、存在感のある男が個室から外へ出てきた。


 「あ……」


 美月姫は男の正体に気が付いた。


 両親や叔父夫婦も同時に。


 「ま、丸山幹事長……!」


 地元民である両親はもちろん、中部圏在住の叔父夫妻でさえ、すぐにこの人物が丸山乱雪であることに気が付いた。


 そして誰もが、言葉を失っていた。


 テレビの画面などで目にするだけでも、他の政治家をしのぐその迫力を国民は思い知らされた。


 今こうして、直接対面してみると。


 想像以上の存在感に、誰もが圧倒されてしまう。


 これがカリスマ性というものだろうか。
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