四百年の恋
 卒業まで。


 それは優雅がここにいられるのは卒業までであり、期間限定であることを暗示していた。


 そして「よろしく頼む」との一言。


 どういう意味なのだろうか。


 単に額面通りに受け取っていいのか。


 同級生として、仲良くやってほしいということだけなのだろうか。


 それともまさか……。


 あの夜のことを丸山は、知っているのだろうか。


 美月姫は不安になった。


 優雅との関係は、あの夜限りのこと。


 (もしくは未だに関係があったとしても、卒業まで限定で目をつぶるけど、その後はもうないと思ってあきらめろという意味も?)


 「こちらこそ、よろしくお願いいたします」


 直接尋ねるわけにもいかず、美月姫はそう答えたのみだった。


 考えすぎかもしれないけど、百戦錬磨の丸山の表情からは何も読み取ることができず、美月姫はただうつむくのみだった。


 「あなた方は、お嬢さんの親御さんたちかな」


 美月姫がうつむいている間に、丸山は美月姫の両親たちの方に向きを変えていた。


 「は、はじめまして。丸山幹事長。いつもテレビなどでご尊顔を」


 美月姫の父が、焦って挨拶をしている。


 普段はテレビを見ながら、「与党の政策は弱者切捨てだ、国民に優しくない!」と力説しているのだけど。


 丸山幹事長を実際目の前にしてみると、その迫力に圧倒され、いつものパワーが出てこない模様。
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