四百年の恋
 ……叔父夫妻を宿泊しているホテルまで送り届けた後、美月姫と両親は帰宅。


 寝る前に一勉強しようとテキストをひらいたものの、集中できずにいた。


 美月姫は携帯を取り、優雅へのメールを作成した。


 「今日はお疲れ様。あんな所で出会うなんて、びっくりしました。しかもご馳走してもらえるだなんて。お父さんにもよろしくお伝えください」


 優雅にメールを打つのは、しばらくぶり。


 慣れないメールなので、かなりかしこまった文面になってしまった。


 「……」


 しばしためらった後、勇気を出して送信ボタンを押した。


 (返信あるかな)


 すると、予想外に早くメールを受信。


 携帯のディスプレイには、「紅陽;清水優雅」の文字。


 大急ぎでメールを開く。


 内容は……。


 「こんばんわ。あの店には結構行くの? 俺は幹事長が帰郷した際には決まって出かける。あと幹事長がみなさんによろしくと言ってた」


 自分の父親なのに、徹底して優雅は「幹事長」と呼んでいる。


 「お父さん」とは呼べない環境なのか。
< 452 / 618 >

この作品をシェア

pagetop