四百年の恋
***


 木枯らしの季節になると、学園はさらにいっそう受験ムードが深まる。


 美月姫もやっと、志望校を決定。


 「東大の文系か……」


 美月姫の成績なら、十分狙える範囲だった。


 学部は文学部。


 いきなり美月姫に「歴史に興味を持った」と言われた時、圭介はびくっとした。


 「どうして歴史に」


 恐る恐る圭介は尋ねたところ、


 「先生の話を聞いているうちに、過去に学ぶ重要性に気がつきました」


 とのことだった。


 「そうか。挑戦する実力があるんだから、是非頑張ってみなさい」


 教え子がハイレベルな大学、特に東大などに合格すれば、自分自身の教師としての評価も高まるという下心もある。


 だけどそれ以上に、能力と実力のある者には望みうる最高の場所を目指してほしいと圭介は願った。


 ただ……。


 「うちのクラスから東大を志望するのは、大村の他に清水と」


 清水の名を口にした時、一瞬美月姫の表情が変わったのに圭介は気づいた。
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