四百年の恋
 (どうして今になって……)


 衝動的な夜から、そろそろ数ヶ月が経過しようとしている。


 行為を終えた時は、その場限りの関係であることに納得づくだったはずなのに。


 深まる秋の冷たい風を肌に感じるにつれて寂しさが募る。


 誰にも言えないこの気持ち。


 親や先生はもちろん、友人にもプライドが邪魔して相談できない。


 それゆえ一人で思い悩んでいるだけなので答えを出せない。


 この切ない気持ちから、どうすれば自由になれるのか。


 これからどうするべきなのか。


 ……優雅には絶対に言えない。


 向こうが何も言ってこないのは、今もこれからも何も望んでいない証だと美月姫は結論付けていた。


 にもかかわらず関係をねだったり、彼女気取りで馴れ馴れしくするのは逆効果。


 利口な美月姫は、それを十分すぎるほど認識していた。


 向こうから何か言って来るまで、黙って待つしかない。


 必要とされていないのに、こちらから何かを求めても何も得ることはできない。


 美月姫は物分りのいい女を、未熟ながらも必死で演じていた。


 「私は……」


 時が経つにつれて、残酷なほどに美月姫は自分の気持ちを思い知らされた。


 ひと時の過ちとはいえ、優雅の腕の中は居心地がよかった。


 愛されなくてもいいから、もう一度優しく抱かれてみたいと願う反面。


 体しか求められないのは切ない、という想いがせめぎ合っていた。


 夜風がさらに冷たくなってきた。


 美月姫は窓を閉め、ひんやりしたベッドに体を沈めた。


 窓を閉めても、外から風の音が響いてくる。


 秋は瞬く間に過ぎ行き、街にはまた寒い冬が巡って来る。
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