四百年の恋
 コース料理なので、店員が料理を運んでくる。


 店員が個室のドアを開けるたびに、美月姫は優雅の登場を期待して、顔を上げた。


 その都度希望は失望に変わっただけだった。


 今日で最後のクラスメイトとの会話にも、なかなか集中できないまま。


 美月姫は優雅の訪れを待ち続けた。


 そのうちあっという間に、コースの二時間は終了してしまった。


 「ユウガ、どうしたんだろ? スッポカシなんて、あいつらしくない」


 優雅は現れないままだった。


 特に仲のよかった面々が、電話やメールを繰り返したにもかかわらず。


 「そうだな……。あいつは確かに時間にはルーズだったけど、断りもなく約束をすっぽかすようなことは、一度もなかった」


 そう言って圭介は、優雅の自宅にも電話をかけた。


 誰も出ない。


 次に優雅の母親の勤務先、というか経営している高級キャバレー「夕映霞」にも電話をしてみた。


 「もしもし、お世話になっております」


 夕映霞のスタッフらしき男性が電話に出たので、ママである清水紫に取り次いでもらおうとした。


 息子である清水優雅の担任教師であると名乗り、緊急の用事があると述べて。
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