四百年の恋
***


 秋は日に日に、日没が早まる。


 5講義目を終えて真姫が研究室に立ち寄ると、辺りはもう真っ暗だった。


 「あ、花里さん。もう無人になるから」


 大学院生(女子)が一人、真姫と入れ替わりに研究室を出て行った。


 「先生たちは、誰もいないんですか?」


 「今日は学会のため、全員出払ってるの。夜は飲み会だから、そのまま研究室には戻らず直帰だって」


 「そうなんですか」


 「だから花里さんが帰る時は、研究室の施錠をお願いね。鍵はそのまま、研究室のポストに」


 「分かりました」


 真姫はひとり、研究室に残った。


 そしてしばらく、論文集に目を通していた。


 来年の卒業論文製作に向けて、今のうちから情報収集をしておきたかった。


 貴重な論文集は研究室から持ち出し禁止のため、この場で目を通さなければいけない。


 必要箇所はコピーするなどして、使い終わったものは本棚に戻しておく。
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