四百年の恋

夕映

***


 翌日の夕方五時。


 春分の日を過ぎ、日没時刻は目立って遅くなっていた。


 まだ明るいとはいえ、夜は間近という時間帯に、美月姫は繁華街へと向かっていた。


 優等生には不似合いな時間帯と場所であった。


 行く先は、「夕映霞(ゆうばえかすみ)」。


 清水優雅の母親の店だ。


 「……」


 どこからか仕入れた、優雅の母親の店の名前。


 住所を調べ上げ、メモを見ながら店を探していた。


 「ここだ」


 探すまでもなかった。


 繁華街の中、一際目立つビル。


 まだ明るいのに、すでに灯ったネオン。


 きらびやかに周囲に存在を示している。


 美月姫はビルに入り、エレベーターで店のある階へと向かった。
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