四百年の恋
花里真姫、ちょうど二十歳。
函館市内の大学に通う三年生。
身長164センチの乙女……というよりもむしろ、立ち振る舞いは男同然。
スカートは、冠婚葬祭時に着用するスーツくらい。
高校時代は制服だったけど、制服のない大学では、日々ジーンズ姿でキャンパス内を闊歩していた。
確かに圭介の言う通り、「姫」というキャラクターには程遠い気がしたが……。
「それより、お前を姫と呼んだその男、いったい誰なんだろう」
「一瞬だったから、もう覚えていないんだけど……。すごく美しかったことだけは覚えている」
「他の花見客か?」
「それが着物姿で。大河ドラマとかでよく見る、戦国時代の御曹司っぽい衣装」
「戦国時代?」
圭介はまた笑った。
「お化けでも見たんじゃねえの」
「違うわよ。だってこの缶ビール、拾って手渡してくれたもん」
真姫は圭介に、缶ビールを指し示した。
「この桜、ちょうど樹齢400年くらいなんだよね」
圭介は桜の木を指差した。
満月に照らされた、妖しいほどに美しく咲き誇る満開の桜の木を。
函館市内の大学に通う三年生。
身長164センチの乙女……というよりもむしろ、立ち振る舞いは男同然。
スカートは、冠婚葬祭時に着用するスーツくらい。
高校時代は制服だったけど、制服のない大学では、日々ジーンズ姿でキャンパス内を闊歩していた。
確かに圭介の言う通り、「姫」というキャラクターには程遠い気がしたが……。
「それより、お前を姫と呼んだその男、いったい誰なんだろう」
「一瞬だったから、もう覚えていないんだけど……。すごく美しかったことだけは覚えている」
「他の花見客か?」
「それが着物姿で。大河ドラマとかでよく見る、戦国時代の御曹司っぽい衣装」
「戦国時代?」
圭介はまた笑った。
「お化けでも見たんじゃねえの」
「違うわよ。だってこの缶ビール、拾って手渡してくれたもん」
真姫は圭介に、缶ビールを指し示した。
「この桜、ちょうど樹齢400年くらいなんだよね」
圭介は桜の木を指差した。
満月に照らされた、妖しいほどに美しく咲き誇る満開の桜の木を。