四百年の恋
 ……一段落。


 真姫は一呼吸し、壁に架けられたカレンダーに目を通した。


 明日の地域史の講義で、やっと福山に会える。


 今までとは違う関係が築かれ始め、最初は照れくささを感じたものの、今では次に会える日を指折り楽しみにしている。


 それから?


 いつまでこんな関係が続くのだろう。


 (これからどうなるんだろう。私たち)


 まだ、正式に付き合っているわけではなかった。


 同じ時間を共有しているだけ。


 (友達以上、恋人未満……?)


 ただの友達とは言えないような、濃密な時を過ごし始めている。


 このままどこへ流されていくのか分からず、真姫は不安さえ感じていた。


 思い出すだけで、胸が苦しくなる。


 この痛みを癒してくれるのは……?


 ガラッ。


 突然、研究室のドアが開いた。


 静けさの中、甘い思い出に浸っていた真姫は、慌てて振り返った。


 「吉野くん」


 圭介だった。
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