四百年の恋
 ふと駅前の駐車スペースを見れば、母校・紅陽学園の制服を着た男子生徒がちょうど車から二人続けて降りてきた。


 夏休みの講習の後、部活に参加したのだろうか。


 スポーツバックを背負っている。


 ラケットが入るような大きなバッグに、シャトルをもじった見覚えのあるロゴマーク。


 (あれは確か……バドミントンの)


 バドミントン、で担任の吉野圭介をふと思い出した時だった。


 「あの車……!」


 今、男子生徒が二人降りてきた車は、圭介のものだった。


 「先生!」


 美月姫は思わず駆け寄った。


 「大村!」


 呼ばれたのに気づいた圭介は、窓を開けた。


 「偶然だな。いつこっちに?」


 「今さっきです」


 「俺もたまたま今、部活の生徒を送って駅まで」


 「バドミントン部、男子部員も入部したんですね」


 「今年、中等部からジュニアチーム経験者が何人か。話したら長くなりそうだな」


 美月姫は微笑んだ。


 高校時代を思い出して、懐かしくなった。


 「大村、これからの予定は?」


 「とりあえず家に帰るところだったんですが、あいにく土曜日なので都合のよいバスが無くて」


 「家まで送るか?」


 「ほんとですか? 助かります」


 美月姫は助手席に乗り込んだ。
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