四百年の恋
 「よかった。つまんなかったかと思ったよ」


 「全然。ためになる話聞けて楽しいです。……先生、また一緒に食事に来ませんか」


 「いいけど。大村はいつ新学期始まるんだ?」


 「十月上旬です」


 「へえ。夏休み長いんだな」


 「その代わり、冬休み短いんですよ。正月明けからすぐ授業です」


 「大学によって、かなり異なるんだな」


 私立大学では、九月の「シルバーウィーク」の頃にはすでに授業始まっていたりする。


 「だから私は、九月の連休までは実家にいる予定です」


 「まだひと月くらい先だな」


 「しばらくはこっちにいますので、その間よろしくお願いします」


 「分かった。また暇なら食事でも行こう」


 「楽しみにしています」


 そして店を出る準備をした。


 「あ、私が食べた分くらいは……」


 会計の際、全額支払おうとする圭介に、美月姫は財布から出した千円を渡そうとした。


 「いいから。大村が社会人になったら、出世払いしてもらうから」


 「そんなに先でいいんですか?」


 「ああ、待ってるから」


 それは何気ない一言だった。
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