四百年の恋
 「本当に待っていてくれますか?」


 「いいぞ。気長に待ってるから」


 「じゃその時になったら、私とデートしてくれますか?」


 「お前が嫌じゃないなら、別にいいけど?」


 「嫌なわけないじゃないですかー」


 「分からないぞ? 何年か後になったら、こんなおっさんとじゃ嫌! とかなってるかもしれないし」


 「先生はおっさんなんかになりません」


 「人間、誰しも年は取るものだ」


 「大丈夫ですって。その頃には私も十分オバサンになってるはずですから。ということで、私といつかデートするのは約束ですよ」


 「了解」


 ……ラッキーピエロを出て、裏の駐車場まで歩くわずかな間に。


 圭介と美月姫は、そのようなな会話をしていた。


 いくら真姫に似ているとはいえ、相手は元教え子。


 じっと見つめられた時など、胸の高鳴りは否めないが、20近く年の離れた元教え子に対して恋愛感情は抱くわけにはいかない。


 こうやって食事に来るのも、恋や受験に失敗して傷ついた教え子の話を聞いてあげて心癒すつもりだった。


 だが……。


 美月姫のほうでは少々事情が違いはじめていたことに、圭介は全く気づいていなかった。
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