四百年の恋
 「先生、大好き……」


 眠る前。


 枕に顔を埋めた美月姫は、そっとつぶやいた。


 朝も昼も晩も、先生のことばかり考えている。


 それだけで胸が熱くなり、やがて苦しくなる。


 こんなに好きなのに。


 (あれほど大胆にアピールしているから、先生だって当然気づいているはずなのに)


 いつも笑顔でかわされている気がする。


 (先生と教え子という関係が、私たちの邪魔をしている)


 疎ましい枠。


 いつまでも子ども扱いされているようで、嫌だった。


 教え子としてではなく、一人の女として見てほしい。


 あんなにいつも一緒にいるのに、なかなか進展がない。


 (本気じゃないのかな……)


 時々心配になる。


 先生は自分のことを、女としては見ていないのかもしれない……って。


 だけど逆に、それは大切にしてくれている証だと、美月姫は自分に言い聞かせる。


 遊びだったら、とっくに体の関係を持っていてもおかしくはない。


 ここまで慎重なのは、先生は自分との将来を真剣に考えてくれているからで、大事にされているのだと美月姫は考えるようにしていた。


 二人の障害は、先生と生徒という関係、美月姫がまだ未成年であること、そして職場や家族など、周囲の問題。


 それと年齢差。
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