四百年の恋
 「何がおかしいんだ」


 「お前があまりにつまらないことで勝ち誇っているからだ。お前が真姫と一緒に過ごしたのは、逆算するとたったの二年半じゃないか。俺が姫を想い続けた400年の時の重さに比べれば、わずかな時間だ」


 「は、400年? お前、何言ってるんだ」


 「姫を放せ。最後の警告だ」


 「姫だと?」


 圭介が尋ねた瞬間、壁の消火栓から消化剤が噴き出した。


 「うわっ」


 消化剤が圭介を直撃。


 圭介が怯んだ隙に、福山は真姫を助け出した。


 「すまなかった。怖い思いをさせてしまった。気付くのが遅れてしまい……」


 福山はそう言いながら、自分が着てきた上着を、真姫に着せた。


 引き裂かれたブラウス。


 このままでは外に出られない。


 「もう帰るんだ。後のことは俺に任せて」


 「任せて、って……。何をする気なの?」


 真姫は圭介のほうを見た。


 急に消化剤に直撃されたので、まだ痛そうにしている。


 (まさかこれから、取っ組み合いのケンカになるんじゃ……)


 真姫はそれを危惧した。
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